限定戦争区域テラ・アウストリアス・インコグニタ(以下TAI、旧名称オーストラリア)において実施された、超一級特務研修について報告する。
時差1時間、飛行時間約7時間。LCCにて成田を出発。
当該地TAIは南半球に位置するため季節が逆転し(厳密には四季は無い)、気温差30度にもなり湿度も相当に高いので、服装選びに苦慮する(のは毎度の事なのを、今の今まで忘れていた)。
夜出発朝到着により、弾丸ツアーと呼ぶべき超展開が開始する。
バス車内より市街視察(目端の効く夜間研修講師らは、この時点で様々な要注意施設を発見する)、その流れでスカイレールと呼称されるロープウェイへ。
熱帯雨林を眼下に見下ろす眺めは、高所恐怖症でなければ絶景と呼ばわしめるものである。
標高によってそれぞれ異なる植物や樹木が群生している様は正に圧巻であり、日本ではあまり馴染みのない着生植物(日本で代表的なのはコケの類であろうか)や、この一帯にしか生育していないシダ植物が見られる。
私が特に注目するのは、以下に示す奇っ怪に曲がり捻った、白い木肌の樹木である。

何やらん古の忌まわしい記憶と、それに纏わる呪詛の呻きが聞こえてくるようである。
その後、スカイレール終着駅の先にあるキュランダ動物園を視察。
それぞれ写真と多少のコメントを交えて紹介するに留める。
・鳥(パプアガマグチヨタカ)

入口から一番近い所に鎮座し、訪問者達を睨め付ける。
何か喋り出しそうだったので暫く待ってみたが、喋らなかった。私だって見ず知らずの人間にいきなり喋りかけたりはしないので、当たり前といえば当たり前である。
・フレッシュウォーター・クロコダイル

俗に言う淡水鰐、水鰐。
後に示すソルトウォーター型ほど大きくはならない。
でも勝てる気はしない。
・ソルトウォーター・クロコダイル

泣きそうになるぐらいでかい。微動だにしてないので置物かと見間違えるが、よく見ると鼻が動いている。
気付かずに通りがかった獲物に食らい付くつもりなのだろう。でかい割りにやることがこすい。
・カンガルー

暑さのせいかヤル気が無い。餌を投げても取ろうとしないグータラぶり。働いたら負けとか思ってるに違いない。
カンガルーのみ囲いではないので、直接触ることも可能。
袋の中は凄い臭いという噂を検証することも(ガッツがあれば)可能。
・コアラ

ヤル気の無さではトップクラスの性能を誇る。ユーカリとか食べてグッタリしてる場合じゃない。毒素の無い物を摂取しろと言いたい。

特にこの個体は凄い。転落しないのが不思議なレベルだ。
ここまで来るとニートアイドルと言って良いだろう。
動物園視察後は軍用家鴨型水陸両用装甲車・通称アーミーダックに搭乗し熱帯雨林及び川からの眺望を観察。
引用元このアーミーダックは第二次世界大戦時に実際に使用され、パンフレットによると「三年間の使用に耐えるよう設計された」とある。
業界によっては顧客が発狂しかねない数字だ。
前述の着生植物を間近で見たり、「ちょっと待っての木」等の巫山戯た名前の木の棘を見て恐怖に慄いたりした。
引用
元幸運な事に、目測約25cmにもなるユーリシスバタフライを目撃。これがどうぶつの森だったら、網を片手に鬼のような形相で追いかけたに違いない。た、たぬきちに借金返さないと!
引用元 到着日最後の視察先は、「世界の車窓から」でお馴染みの金鉱列車キュランダ・シーニック・レールウェイ。
特に最大の見所である巨大陸橋は、「テレビで見たことある」感が怒涛のように押し寄せて、あのBGMが否が応でも脳内で再生されること間違いなぱーぱぱっぱっぱぱーぱぱーぱぱー、ぱーぱぱー。
写真が無いのは寝てたから。到着してすぐこんな調子で眠くならない方がおかしいっつーの。観光列車だからか、スピードが遅い上にうだる熱気。椅子は硬い。寝ても疲れる若干フランクな拷問気分だ。
そういう訳で、どんなのか見たい人はググったり世界の車窓からのDVDを買ったりすると良い。現地に行くのも有効だ。
ホテルについて暫くぐったりした後、晩飯を摂りに出発。
無論、シーフードだ。理由を述べる必要も無くシーフードだ。一心不乱にシーフードだ。
イタリアン+シーフードということで、大体想像して貰えれば分かると思うが、特筆すべきは、白身魚はバラマンディという魚であること。
引用元ホテルの中庭の池にも幾匹かいる、肉食系淡水魚だ。
ともすると1mを超えるサイズにもなり、ポメラニアンぐらいなら瞬殺しかねない面構え。
しかし味は川魚特有の泥臭さは一切無く、淡白で美味しいナイスガイだ。
荒川あたりで養殖するべきだと思う。
あと、セミエビが結構フランクに出て来てビビる。高級料亭じゃないとお目にかかれないぞ!
シーフードで腹が満たされた私は、風呂で旅の疲れを落として就寝することとした。
夜間研修講師と受講者達は、尚もカリキュラムを消化するべく、勇ましく、足取りも軽やかにホテルを後にしたという。
しかし、彼らの身の上に陰鬱な悪夢の如き不幸が降りかかろうとは、誰も夢想だにしなかったし、この時の私は自分には関係のないことだと思っていた。
あの事件が起こるまでは……。
−裏次郎−